顧客視点の解析は「解析ってよくわからない」という方にこそオススメ

こんにちは。コンセプトダイアグラム エバンジェリストの小杉です。

アクセス解析ツールを入れてみたけど、使い方がよくわからない……
アクセス解析ツールは見てるけど、ただ数字を追ってるだけ……

こんなふうに「解析ってやってみたけどよくわからない」という方は少なくないと思います。ですが、そんな方にこそ顧客視点の解析をオススメしたい!

そもそも「解析がわからない」というのは、「ページビュー」や「直帰率」といった用語の意味を覚えなくてはならないというハードルがあり、それらの意味を愚直に覚えたとしても、覚えただけで自分ゴトにできていないという背景があります。解析データが示すものはユーザーの行動だと知っても、それを使えるかどうかは別の話なんですよね。

でも、顧客のことを知ることができるとわかったら、目の前にある指標にこだわらず、「こういう行動を見たい」「これは本当に喜ばれているのかな」「これがわかるならウレシイ」といった欲が出てくると思います。

だからこそ、解析を自分ゴトにできるのが顧客視点の解析、つまり「カスタマーアナリティクス」なんです。今回は、まず「解析を自分ゴトにするための基礎」をお伝えしますね。

そもそも、解析しにくいホームページもある

「解析」の目的って、何だと思いますか?

たとえば、「身体の解析」である健康診断。この目的ってなんでしょうね?先日、人間ドックに行ってきた夫(勤続20年以上の会社員)に聞いてみました。

健康診断って何のためだと思う?
そりゃ、自分の健康状態を知るためだろ?
知るだけ?
お酒減らすとか、医者に行ったほうがいいとか、判断できるじゃん
そうそう、判断するためだよねー(よしよし)
まあ、オレは知っただけで終わってるけど
おおーい!

……って、私もヒトのことは言えませんが(自営業になって健康診断行き逃してる勢)、自分の健康状態を知って、次にどうしたらいいかを判断するのが健康診断の目的です。

解析の目的は「判断」するためにあります。

つまり「なんとなく作った目的のないホームページ」では良し悪しを判断する基準が定まっていないので、本来、解析のしようがないのです。作ったあとから目的を持つのは悪いことではないのですが、その場合、多くは問題発見から入ります。今までの解析方法がそんな感じなので、見てみましょう。

今までの解析方法は、企業の努力を評価するもの

自社のホームページを評価する方法として、「アクセス数が多いか」「ページビューが多いか」「ユーザー数が多いか」「直帰率が低いか」といった判断が一般的でした。これは解析の基礎知識として学んだ方も少なくないでしょう。

あらかじめ用意されている数字から、ホームページの成長を定量的に評価するために行うもので、以下のようにまとめられます。

  • 視点:ヒトではなくモノを見る(サイト、ページ、流入経路など)
  • 目的:企業の努力を定量的に確かめるため
  • 使うデータ:断片的な行動(閲覧・クリック)データ
  • 集計方法:一定期間内の合計や割合の平均値
  • メリット:ベンチマークと比べて足りていない課題の発見ができる
  • デメリット:短期的な改善につながるだけで、自己満足になりがち

定量的に評価するのは健康診断と同じ

上記は「健康診断」と同じで、客観的にわかるデータにフォーカスされています。結果を元に判定がなされて、「休肝日をつくりましょう」「運動をしましょう」といった、一般的なアプローチがなされるわけです。

ですが、「なぜお酒を飲む生活を続けてしまうのか」「なぜ運動不足になってしまうのか」という点においては深く触れられず、個人の努力に一任されます。「痩せられるものなら痩せたいんだけどさ〜」と言いながら、ビールを空けてはいないでしょうか。やがて「E」というアルファベットを目にしてやっと「ヤバイかもしれない……」という危機感が生まれて行動する頃にやっと、ちょっと後悔したりもするわけです。

そうして、ちょっと後悔した人は、「無駄な飲み会の誘いは断る」「お酒を飲む時間の代わりに趣味の時間をつくる」など、「なぜ」という課題にフォーカスした解決策を導くことができ、自分と同じ轍を踏んで欲しくないと考えてオトナになっていくのでしょう……(遠い目)

これと同じようなことが、解析の世界でも起きています。

一般的には、ホームページはアクセス数が多く、問い合わせが増えてほしいという期待が共通します。この前提で解析を行っても、できるのは問題を発見するくらいです。

「検索エンジンから来ていない」「そもそもアクセスできない」という「E判定」の状況なら危機感MAXでなんとかせねばと動くのでしょうが、「わかっちゃいるけど……担当者もいないし、問い合わせが一気に増えても困るし……今はまだ、ねえ」と、理由をつけて何もしないままで終わってしまうことが少なくありません。

それに、データの一部を見て「PV増えた!オレがんばった!」「問い合わせも増えたしノルマ達成!」と自己満足で終わってしまうのは、問題発見どころか、ただの自己満足です。健康診断で言えば、「よし!前回より体重減った!」で終わらせてしまうのと似ていますよね。

今までの解析では往々にしてこのような状態が起きており、「レポートを毎月出してもらっていたけど、何も変わらないから辞めたいんだよね」という相談もまれによく受けています。

だからこそ、せっかくのホームページを活かすためには「なぜ」という課題にフォーカスする解析が必要なのです。「なぜ」という課題にフォーカスするには、ビジネスの背景(コンテキスト)を理解しなければなりません。そして良し悪しの判断基準を定めて解析することになります。それは一朝一夕でできるものではなく、顧客一人ひとりの現状と長期の変化を理解し、改善していく必要があります。

「ん?つまり、マーケティングと同じでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。解析はマーケティングとは別物と捉えられることもあるのですが、別物どころか延長線上にあると考えた方が良いことが、おわかりいただけると思います。

企業の成長は顧客によって支えられていると考えている方なら、「こんな顧客とこんなふうにコミュニケーションして、こんな社会をつくっていきたい」というビジョンを描いていることと思います。そして、その成長を判断できるのが理想的ですし、わくわくしませんか?

顧客の行動がわかる、カスタマー視点の解析

起業当初の理想を追い求めるには、現実はそんなに甘くないと考えるかもしれません。企業の体力になるのだから、売上や利益を追い求めてもいいじゃないかという考えもわかります。ですが、コンセプトダイアグラムやカスタマーアナリティクスは、それでも顧客とのコミュニケーションによってビジョンを実現したい企業が、羅針盤を描くためのメソッドなのです。

とはいえ、顧客の変化を長い目で見ていく必要があるため、戦略転換を行うときや新たなビジネスのマーケティングの際に行うのが最適です。以下のような特徴があります。

  • 視点:モノではなくヒトを見る(感情、思考、行動)
  • 目的:顧客の状況や体験の変化を確かめるため
  • 使うデータ:時系列の行動(履歴・再訪問・スクロールなどのイベント)データ
  • 集計方法:コミュニケーション設計に合わせる
  • メリット:コミュニケーションが見えるのでモチベーションを維持しやすい
  • デメリット:短期利益にはつながりにくく、地道に改善していく必要がある

今までの方法とは異なり、カスタマー視点の解析はコミュニケーション設計が不可欠です。つまり、対象者の抱えているニーズや葛藤に対して、どのような感情の変化が起きれば意図する行動をするかなど、先回りした「おもてなし」を設計する必要があります。

ですから、ウェブは「おもてなし」を実行する場であり、「適切にもてなせているか」を判断するのがカスタマー視点で行う解析の役割です。

「適切にもてなせているか」を評価するには

「おもてなし」の評価は曖昧だと感じるかもしれません。実はそんなこともなく、たとえば、

  • 意図した行動フローで進んでいるか(セグメントごとのリピートやPVなど)
  • コンテンツが網羅的に見られているか(同じカテゴリ内でのPV比較など)
  • コンテンツが深く見られているか(1つのコンテンツの精読率など)

といった視点で、ヒト単位のコミュニケーションを時系列で評価できます。

もちろんこれらは一例で、マーケティングの背景によって独自のコンテンツ評価を行うのが適切ですが、このような考え方を知るだけでも、「カスタマーアナリティクスって面白そう!」と思いませんか?

「なるほど!」と思ったら、早速 Google アナリティクスを見てみてください。大抵の方は、そこで次の壁にぶつかります。

そう、「どこを見れば上記のようなことがわかるのかがわからない」のです。顧客視点の解析が難しいと言われる理由でもあるので、次はここを深掘りしていきましょう。

この記事を書いた人

小杉 聖

1978年、新潟県南魚沼市生まれ、長岡市在住。
コンセプトダイアグラムエバンジェリスト。
心理学に基づいたコミュニケーション戦略立案、コンテンツ分析、SNSなども含めた幅広いウェブマーケティング、WordPressによるサイト構築が得意。
ウェブ活用の人材を育てる「ウェブ解析士認定講座」や関連セミナーを新潟県内で唯一定期開催。WACAアワードにて 2016年 Best of Best を受賞。
WordPressコミュニティの一員でもあり、毎月、無料の初心者向け勉強会を定期開催。ワークショップセミナー講師としても活動中。
夫と2人の子どもが大好き。